重度訪問介護で暮らすー難病ALS−

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

ALSとは、運動を司る神経細胞群が徐々に破壊される事によって、「筋肉を動かす」指令が伝わらず、筋力が弱くなり、やせていってしまう難病です。(国の特定疾患に指定されています)

症状の進行により、ほぼ全身の筋肉に麻痺が起こります。

麻痺が呼吸筋まで及ぶと、気管切開をして人工呼吸器を装着します。

24時間のヘルパー制度を使って生活している人もいますが、介助制度がきちんと使えれば、人工呼吸器を使いながら車椅子に乗って外出し社会活動ができます。海外の国際会議に出席するALSの人工呼吸器利用者もいます。家族と暮らす人も多いですが、24時間の介助制度を使って1人ぐらしをしている人も何人もいます。事業などを経営している人もいますし、生活保護の人もいます。

 

ALSの特徴として、以下の点があります。

・筋肉は動かなくても感覚はあること

・思考能力は低下しないこと

症状の進行の程度によって求められるレベルは変わりますが、介助やケアの際には、当事者の考え・思いを正しく受け取り、「手足の代行」ができる事が必要です。

 

重度訪問介護を利用して生活する実例

重度訪問介護とは:

障害者自立支援法の中の訪問系サービス(ホームヘルパー制度)の一つです。

24時間の連続介護が必要な最重度の障害者に、24時間連続してヘルパーを使う(8時間勤務のヘルパーが3交代で)事を想定して作られた制度です。もちろん1日16時間や12時間の利用をして、残りは家族が介護ということも出来ます。

重度訪問介護は身体介護とは違って、ヘルパーが障害者に呼ばれるまですぐそばで座って待つ「見守り待機」もヘルパーの仕事となっています。介護保険や障害者自立支援法の身体介護のヘルパーは、決められた身体介護を1時間〜1.5時間程度の短い時間にさっとやり終えて帰って行きますが、障害者自立支援法の重度訪問介護は、同じヘルパーが最低8時間障害者のそばに座って待ち、排泄や体位交換や文字盤や水分補給などを障害者に言われたら、言われたときに即座に介護を行い、それが終わったら、次に呼ばれるまでまた傍に座って障害者を見守りながら待機します。外出の介護も重度訪問介護のヘルパーが行えます。重度訪問介護を毎日使っている障害者はいつでも外出したい時にヘルパーと外出ができます。

たんの吸引や体位交換など、いつ必要になるかわからない介助内容の多いALS障害者等には、介護保険や少ない時間数を細切れに支給されると、大変危険ですし生活の質にも支障が出ます。その点、重度訪問介護であれば、安全に暮らせます。

 

今回は、この重度訪問介護制度を使い、自己負担と合わせ1日24時間の介護を受けて生活している秋田県の農村部のX村のMさんと、1日16時間近い制度を受けている秋田県の農村部のZ町のNさんの暮らしを紹介します。

 

 

 

★家の中でのMさんの生活

朝起きるとまずパソコンに向かう

 

昼間のほとんどをパソコンの前で過ごし、コミュニケーションもパソコンで行う

 

文字盤でコミュニケーションをとる

 

 

シャワーは週2回、月曜日と木曜日に行う。リフトでシャワー室へ移動

 

シャワーの際も、文字盤でコミュニケーションをとりながら

 

 

来客用の五目寿司作り。ヘルパーに指示を出して行う

 

歯磨きをする時は、文字盤で磨き残しがないかなど、話しながら

 

毎日24時間すべてにヘルパーを使い、1日2〜3交代のヘルパーで暮らしています。


★Nさんの家の中での生活

文字盤で会話しながら、体があついかさむいか?聞いているところ

 

 

「足の位置を変えて欲しい」というコミュニケーションにより、位置を整える

 

「さむい」ということで、毛布をかける

 

 

 

Nさんの部屋の定位置

四肢屈伸(関節が固まってしまわないよう伸ばしたり閉じたりする)の様子1

 

 

 

四肢屈伸の様子2

 

吸引1

 

 

 

吸引2

 

モーニングケア・顔を拭く

 

 

 

モーニングケア・髭をそる

 

モーニングケア・歯を磨く

 

 

 

ごはん

Nさんの、部屋の中での定位置

 

 

Nさんも、毎日24時間すべてにヘルパーを使い、1日2〜3交代のヘルパーで暮らしています。

(介護保険と障害の重度訪問介護など公的制度が大部分で、自費も併用)

 

 


 

    Mさんの外出風景

 

 

(ヘルパーさんよりコメント)

ヘルパー2名を同行させ近くのホームセンターへショッピング!

事前にヘルパーさんに指示(パソコン・文字版)をだし、生活用品の不足のものなどを買いに行きます。

ごく普通に、ご自分の欲しい物、興味を持ったものを、文字版を使用し、「棚からとって!」と指示を出しているところです。1名のヘルパーが指示を聞きとり、もう1名が動くということで、常にMさんの側にヘルパーが見守っているので、安心して買い物ができます。

コンバインに乗って稲刈り

 

稲刈りの応援に来た、Nさんと

 

(ヘルパーさんのコメント)

どんな人にも人生があるように、Mさんは、村の第1次開拓者として農業と共に歩んでこられました。

思いいれも並々ならぬ強さがあり、田んぼ作りは今、他の方にお願いしてあるものの、収穫の稲刈りを「死んでもいいから!」と奥様とヘルパーにパソコンと文字版を使い訴えられ、実現した稲刈りです。

Nさんもその応援にと、2名のヘルパーを同行させかけつけました。

日々の生活はもとより、こういった呼吸器を装着した患者さんの移動とは、危険ととなりあわせです。

心通った慣れたヘルパーさんが介護できる時間の支給がないと、実現できなかった事です。

 

 

 

 

 

 

※秋田ALS協会の活動写真

(ヘルパーさんよりコメント)

遠方に出掛ける時は、2名のヘルパーが必ず同行します。

2名のヘルパーは、必ず1日の勤務が8時間連続Mさんの側におりますので、「あ・うん」の呼吸、かゆいところに手が届く!というように、Mさんの身体、気持を理解されていると言っても過言ではありません。

呼吸器を装置している患者さんは、いつ何どき何が起こるかがよめません。

タン吸引、体交等、自分で何1つとして動けないお身体であるために、常に介助者がいないとならない状況にあります。

すると必然的に介護保険での支給時間では、とうてい間に合いませんし、まして、時間を細切れで利用すると言った介護では、介護内容もそぐいません。患者にとっても介助者にとっても苦痛を伴う結果となってしまいます。そこで、重度訪問という支援が必須になってきます。

コミュニュケーション1つとっても、声がだせない、動けない患者さんにとっては、意思を伝える!という事自体が、困難ですし、その意思をくみとる介護側にとっても、時間を要します。こうして、重度の障害を持っていながらも、外出等ができるのも、患者さんを支える介助者と本人の強い意思…心の絆があってだと感じます。

 

ALSの患者さんのところへ訪問

※ALS仲間訪問(ヘルパーさんよりコメント)

 

同じ病気をかかえた方をヘルパー2名同行させ訪問させていただいております。

患者さんは元より、それを支える家族の気持、介護保険しか知らない、がまんして生活されている方々の為に、松本さんご自身が、重度訪問という支給の時間を利用して安心したヘルパーと共に日々活動されております。

 

 

 

その他のALSの方々の外出の写真

 


 

岡部さん ロックグループTOTOの日本公演で武道館でTOTOと交流。

 

岡部さん 地下鉄

 

 

 

岡部さん シドニーにて

 

 

 

シドニーにて  日本ALS協会長尾義明さん

 

震災支援のカンパ活動(東京 西新宿デパート前 橋本操さん)

震災支援のカンパ活動(東京・銀座 橋本操さん)

 

東京都庁に陳情

 

チェロソロコンサート 篠沢さん・橋本さん

 

篠沢さん 受賞パーティー

 

その他のALSの皆さんの写真(動画):さくら会制作

 

人工呼吸器利用者の24時間介護と自立生活の事例

 

 


障害福祉制度の重度訪問介護を使って長時間連続のヘルパーを使い、自分に慣れたベテランヘルパーを確保して社会に参加しながら生活をしているALS患者が増えています。

 

ここでは秋田の事例を掲載しましたが、同様に長時間のヘルパー制度を(重度訪問介護制度を使うことによって)利用しているALSなどの最重度障害者は、全国47都道府県中、過半数の都道府県にいます。

また、例えば、毎日20時間以上の重度訪問介護を利用している重度障害者は全国37都道府県にいます。

 

毎日24時間(月744時間)の公的な介護制度を受けている最重度障害者が1人以上いる都道府県=黒塗りつぶし

この表は2011年の情報です
2017年に47都道府県で24時間事例が実現しています 詳しくは
http://www.kaigoseido.net/topics/09/24kaigohosyou.htm

障害福祉の介護制度は、1人1人の身体の状況や同居家族の状況等を加味してサービスの時間数が市町村によって決まる制度です。介護保険とは違い、サービスに一律の上限はありません。ヘルパー等の制度の根拠法律である、障害者自立支援法では、市町村の責任として、障害者が自立した生活ができるようなサービスを決定することが書かれています。

もちろん、これを守っている市町村もありますが、多くの市町村では障害福祉担当課は庁内で後ろ盾の議員も(土木建設部門などと違って)少なく、必要な予算を財務部門を説得して確保する努力がなされていないため、予算不足で法に従ったサービスを実施していません。しかし、重度の障害者自身が市町村の課長などに交渉して「命に関わる大変な状況」を粘り強く長期にわたって毎月説明していくことで、制度が改善していきます。実際、今回紹介した秋田でも、最初は介護保険だけで、障害福祉の重度訪問介護は0時間でした。粘り強く交渉していくことで、時間数が伸びていきました。

 

 

ある最重度障害者の1週間のサービス利用形態

(毎日21時間の重度訪問介護と3時間の介護保険訪問介護を利用)

 

月曜

火曜

水曜

木曜

金曜

土曜

日曜

7:00

15:00

 

常勤ヘルパーA

8時間

常勤ヘルパーB

8時間

常勤ヘルパーC

8時間

常勤ヘルパーD

8時間

常勤ヘルパーE

8時間

常勤ヘルパーA

8時間

常勤ヘルパーC

8時間

15:00〜

23:00

常勤ヘルパーD

8時間

常勤ヘルパーA

8時間

常勤ヘルパーB

8時間

常勤ヘルパーC

8時間

常勤ヘルパーD

8時間

常勤ヘルパーE

8時間

常勤ヘルパーB

8時間

23:00〜

7:00

非常勤ヘルパーX

8時間

常勤ヘルパーE

8時間

常勤ヘルパーA

8時間

常勤ヘルパーB

8時間

常勤ヘルパーC

8時間

常勤ヘルパーD

8時間

常勤ヘルパーE

8時間

8:00〜9:30と17:00〜18:30が介護保険訪問介護。それ以外の時間はすべて障害施策の重度訪問介護)

 

介助内容の相談、時間数交渉等は全国障害者介護保障協議会まで

★介護保険などの少ない時間数で、支給時間を細切れに出される方

★支給される時間数では足りないと感じる当事者や家族の方

★その他、重度訪問介護について、まずは詳しく情報の欲しい方

制度係まで、お電話ください。

時間数交渉の情報交換、制度相談を11時〜23時まで行っております。

TEL 0037−80−4445(フリーダイヤル)

TEL 042−467−1470

市町村と交渉して制度の改善を

重度訪問介護などヘルパー制度の24時間化ですが、長時間のヘルパー制度が必要な最重度の障害者であっても、市町村には、障害者個々人が自立した生活ができるような支給決定をする責任があります(障害者自立支援法2条第1項)。現在、国の障害ヘルパー制度の理念にのっとって、必要なヘルパー時間を個々人ごとに決定している市町村も増えてきた一方、いまだに過半数の市町村では、長時間介護を必要とする重度の障害者に対して、一律のヘルパー制度の上限を設けるなど、制度運営上の違反を行っている実態があります。

 自立支援法施行により、ヘルパー制度が義務的経費となったため、1年中、いつの季節からの新規利用開始(施設等からの地域移行によるアパート暮らしなど)でも、国庫負担がつきます。

 市町村と交渉し、命にかかわる状態であることを事細かに説明し、必要なヘルパー制度の補正予算を組んでもらうまで交渉を続ける必要があります。

 交渉は今から行えます。以前から1人暮らししている方も、今から時間数アップに向けて交渉を行うことが可能です。(たとえば、「学生ボランティアが卒業等でいなくなってしまった」、「障害が進行した」、「制度が不足する部分のヘルパー時間を緊急対応として無料で介助派遣してくれていた事業所が、それをできなくなった」などの理由がある場合は、緊急で交渉が可能です)。

 

不服審査請求のアドバイスも実施

 交渉しても進展が全くみこめなくなった場合や、交渉拒否などをする悪質な市町村の場合には、都道府県への不服審査請求のアドバイスも行っています。不服審査請求には期限がありますが、実際には、再度の支給量増加の申請を市町村に出して時間数変更なしの通知を受けられるので、事実上は、期限なしにいつでも不服審査請求を出せます。

 

入院中の介護制度もつくろう

 入院中の介護制度は、地域生活支援事業で実施可能で、国庫補助もつくので、自治体単独制度で作るしかなかった支援費制度以前に比べて、比較的容易に制度を作ることが可能です。病院の診療報酬の通知との関係で、コミュニケーション支援事業として実施することになります。交渉時に説明がきちんとできないと言語障害者のみを対象にする制度になってしまいますが、例えば腹痛や肺炎などで入院した筋ジスや頸損の障害者でも、声が出ないと介護方法など説明できませんのでコミュニケーション支援事業の入院介護制度の対象に加えることが可能です。西宮市・松山市・大分市・広島市ではそのようになっていますので、これらの市の要綱や運用を参考に、ご自分の市町村と話し合いを行ってください。なお、注意点が多いので、交渉の前や途中に当会にお電話ください。

 

 当会には、人口1万人以下の過疎の町から都会まで、どんな規模の自治体でも24時間の介護制度を作ったサポート実績があります。入院介護制度の制度化のノウハウも豊富です。交渉をしたい方は、制度係までご連絡ください。厚生労働省の情報、交渉が進んでいる自治体の制度の情報、交渉ノウハウ情報など、さまざまな情報があります。当会に毎週電話をかけつつ行った交渉で24時間介護保障になった実績が多くあります。ぜひ交渉にお役立てください。

 

その他の秋田の記事
http://www.arsvi.com/2020/20200203on.htm
http://www.kaigoseido.net/kokyuki-jiritu/akita_taiin.htm

 

介助内容の相談、時間数交渉等は

全国障害者介護保障協議会まで

 

★介護保険などの少ない時間数で、支給時間を細切れに出される方

★支給される時間数では足りないと感じる当事者や家族の方

★その他、重度訪問介護について、まずは詳しく情報の欲しい方

制度係まで、お電話ください。

時間数交渉の情報交換、制度相談を11時〜23時まで行っております。

(土日祝は緊急相談のみ)

TEL 0120−66−0009(フリーダイヤル)

TEL 042−462−5996

http://www.kaigoseido.net/

187-0003    東京都小平市花小金井南町1-14-2

 

 脳で考えただけでPCが操れるようになりました(ALS等 むけ)

■介護制度情報内のALS関連記事リンク

■介護制度情報内の「人工呼吸器」検索リンク

■おすすめのリンク先 「さくら会」

http://www.sakura-kai.net/wp/media/
http://www31.ocn.ne.jp/~sakurakai/


現在、全国各地のALS患者等最重度の方で重度訪問介護を常勤ヘルパーで8時 間連続などで24時間提供してくれる事業所がない市町村むけに、吸引など含め て常勤中心で24時間のサービス提供ができる重度訪問介護事業所をその市町村 に直接つくるプロジェクトをALS関係団体と計画中です。
長時間の重度訪問介護が交渉の結果支給決定されても、事業所がないという方 は、ご相談下さい。
0120-66-0009 広域協会 担当:大野宛
(2014/6/1)

このプロジェクトのモデル事業1号の長崎県の離島の壱岐での取り組みを紹介 します (2015/01)

富山県のALSの方の事例 (2017/06)

その他の秋田事例 (2021/04)

■人工呼吸器利用者の24時間介護と自立生活の事例

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