2010年9月厚生労働省医事課・障害福祉課ほかとの話し合いの要望資料  全脊連・介護保障協議会ほか10団体の資料

 

 

 

 施設と違って在宅では1人暮らしの重度の全身性障害者がたくさんいます。24時間の重度訪問介護等の介護制度を受けている障害者もいます。

 人工呼吸器操作(訪問看護は設定を間違えて帰るので障害者の指示で十度訪問介護ヘルパーが直している)、カニューレ交換(子供の場合はすぐ詰まるので)、てき便(体調や社会参加の都合で決まった時間に行えるとは限らない)など、ありとあらゆる医療的ケア(医療行為ではない医療類似行為)が重度訪問介護などのヘルパー等によって行われています。子の形で何十年もわれわれ重度の障害者は地域で自立生活してきました。
 24時間365日の看護師の配置ができない以上、医療的ケアはヘルパーで出来ないと重度全身性障害者は生活できません。

医師法にも政省令・通知等にも「何の行為が法律上の医療行為」で「何の行為が医療行為でないか」を一切書いていない。裁判の判例ではニセ医者などが患者を死亡させたり重大な事故を起こしたりした時に医師法17条は発動されている。厚労省医事課も2001年当時には、「家庭で障害者の家族が行っている吸引、胃ろう、てき便などは医師法で規定する医行為とはいえない場合もありうる。」と障害者団体に言っている。吸引や胃ろうの介助やてき便などは、医療行為か否かがはっきりしない「グレーゾーン」として長年扱われてきた。2001年12月に吸引やてき便(肛門から便を指でかきだす介護)などを自分で推薦登録したホームヘルパーにやってもらっている1人暮らしの障害者の団体が医事課・老健・障害福祉部と話し合った際にも、「今後も1人暮らしなどの障害者が困らないように」今後もグレーゾーンで行きましょうと医事課が言っている。

 

 2000年当時は医事課は障害者団体との話し合いで「しょっちゅう「これはヘルパーがやってよい行為か」と電話が医事課にかかるが、「医療行為かどうかはいろいろなケースがあり、電話等で聞かれてもわかりません」と答えている」と話していました。このような回答方法に戻すべきです。

 

 

 


参考資料

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全国障害者介護制度情報(全国障害者介護保障協議会)より

吸引や医療類似行為の過去の交渉のまとめ

2000年2月

医療類似行為関連の厚生省交渉の報告

 2000年2月7日に医療類似行為関連の交渉を7団体合同で行いました。

参加者

 厚生省からは、健康政策局医事課(医師法の考え方の担当)の法令係長、老人保険福祉局老人福祉計画課法令係主査(今回の総務庁勧告に対す る回答取りまとめ担当)と、障害福祉課身障福祉係長に出席していただきました。

背景

 最近、ヘルパーの医療類似行為に対して、一般ヘル パー業界や民間事業者からの規制緩和の声が出ていますが、そんな中、総務庁から「どこまでがヘルパーのできる行為か具体的に示せ」という勧告が出ました。 人工呼吸器利用者の吸引などは、長時間介護に入る自薦ヘルパーには簡単でも、たまにしか派遣されない一般ヘルパーに担わせるには問題が多く、「具体的に示 し」たら「だめです」という回答になってしまうことが明らかでした。

結果

 まず交渉に参加した人工呼吸器利用者(単身24時間介護)2名から生活状況の説明をし、次に、ベンチレーターネットワークの人工呼吸器利 用者の生活資料を見せ説明しまた。

 さらに、吸引等医療類似行為は、全身性障害者の1 人暮し運動がはじまった70年代から自薦介護人が行っており、さらに、「本人の手のかわりとしてやっている」「不特定多数に対してやっているわけではな い」という2点を説明しました。また、訪問看護婦や訪問医は人工呼吸器の設定を間違えて帰るが、障害者と自薦ヘルパーがそのつど直しているという事例を出 して、長時間介護に入っている自薦ヘルパーは一般ヘルパーとは違うので切り離して考えるべきだと説明しました。

 医事課は、「今までもグレーゾーンということでやってきた」「今後もグレーのままがいいと思う」「はっきりとは(総務庁には)回答できな いと思う」と話し、老人計画課も、吸引などについては、はっきり書かないことには異論はないようでした。

 何一つ回答しないわけにはいかないということの で、「薬やガーゼ交換程度はいいですよ」とだけ書けばいいのではないかと提案しました。総務庁への回答が3月末のため、まだ回答方針の検討に入っていない ということでしたが、ほぼ同じ認識になったので交渉を時間内に終えました。(自治体が吸引OKの方針でも、国はダメとは言わないということも確認しまし た)。

(次ページは当日の要望書です)

厚生大臣殿

平成12年2月7日
(仮称)常時医療類似行為介助を要する在宅障害者連絡会
構成団体
ベンチレーター使用者ネットワーク(札幌市)
全国自立生活センター協議会
全国障害者介護保障協議会
静岡障害者自立生活センターヒューマンケア協会(八王子市)
自立生活企画(田無市)
障害者自立生活支援センターピアネットあおもり
連絡先:全国障害者介護保障協議会
東京都武蔵野市境2-2-18-302
TEL0424−62−5996

要望書

総務庁が11年9月24日に厚生省に対して行った「要援護高齢者対策に関する行政監察結果報告に基づく勧告」の(7)番の「『医療類似 行為のどこまでがヘルパーの行う業務で、どこからがヘルパーの行えない業務か』を具体的に示すこと」の件について

  当会の構成団体には、24時間要介護で単身生活を行う在宅の全身性障害者で人工呼吸器利用者などがおり、全身性障害者介護人派遣事業(ホームヘルプ国庫補 助利用制度)の自薦の介護者や自薦のホームヘルパー(ホームヘルプ国庫補助利用)が吸引等を24時間、10分〜20分ごとに行っています。また、単身の全 身性障害者の多くが導尿、摘便、経管栄養、人工呼吸器の操作を(障害者が指示をして)自薦の介護者(上記同様ホームヘルプ国庫補助利用制度による者も含 む)に行わせています。これらは、全身性障害者の1人暮しの運動が広がった1970年代からずっと行われてきました。(自薦介護人とは、各障害者が確保し た専用の介護人で、最重度障害者の場合、例えば、週20〜40時 間、数年以上にわたって介護を行う。介護内容は障害者の指示によって行う)。

 法律ではどこまでが医療行為で、どこからが医療行 為ではない(医療類似)かは規定されていないため、一部自治体の障害者部局は「吸引程度では医療行為ではない」という方針(医療類似行為と呼んでいる) で、全身性障害者介護人派遣制度(ホームヘルプ国庫補助利用)などで、吸引等を行うことを認めています。

 厚生省が総務庁勧告への回答で「具体的に示す」と当会の障害者は生活が維持できなくなる可能性があるので慎重な対応を求めます。又、 今後医療類似行為に関係する内容で方針の確立や変更を行う場合は、障害当事者団体に事前に相談すること。

 


2001年12月

2001年12月6日の厚生労働省交渉の報告

人工呼吸器利用者等の吸引と医療行為との関係についての話し合いを行いました

参加:医政局医事課企画法令係(医師法についての見解を担当)
   老健局振興課法令係(介護保険事業者の基準などを担当)
   障害保健福祉部障害福祉課身障福祉係

 12月6日に、ベンチレーター利用者ネットワーク、静岡障害者自立生活センター、自立生活企画など、人工呼吸器利用の1人暮らし障害者が いる7団体で吸引についての厚生労働省交渉を行いました。

 背景には、ある国会議員がヘルパーへの吸引行為開放をもとめて質問を行い、厚生省が「ヘルパーに開放する予定はない」と回答をしたという ことがありました。

 

厚生労働省が明言「すべての吸引が医療行為とは かぎらない」

 交渉の中心は、吸引のすべてが医療行為かどうかという点です。これについては、話し合いの結果、

「肺炎でICUに入っているような状態の方への吸引は医療行為だが、治療が終わって、在宅に帰って安定している方の吸引は、医療行為でない 場合がある。あらゆる吸引が医療行為ですかという質問に対しては、それは違うとはっきりいえます」と厚生省医事課として回答がありました。また、老健局振 興課は「吸引を行っているからと言って介護保険の訪問介護事業者指定を取り消しにするということはない」と回答しました。(障害福祉課も「同様です」と回 答あり)。もし、そのような指導が県からあれば、相談すれば厚生労働省から指導してくれるとの事を約束しました。  今回の交渉は1人暮らしの人工呼吸器利用者で他人介護者が吸引をしている方を当事者と位置付け、交渉を行いました。まず、全国各地の1人暮しの呼吸器利 用者の介護者を使った生活状況を説明しました。ベンチレーター利用者ネットワーク代表の佐藤さんが実際に吸引を介助者にしてもらい、厚生省担当者に近くに よって見てもらい、さまざまな点を解説しました。ま た、病院から1人暮らしに移行する場合の医師や病院との関係の実態も説明し、「自立生活者の場合は、入院して気管切開して、治療が終わってすることがなく なるから医師は退院許可するのであって、自立生活者の吸引は医療ではない」という事を理解してもらいました。

 医事課は、「ある瞬間の吸引が医療行為かそうでないかは、一概に判断できない。その日の体調にもよるし、体調や周りの環境にもよって変 わってくる。もし、はっきりとどちらか判断しようと思えば、裁判を 行って、その瞬間の体調の状況、医療の経過、介護体制の状況などたくさん資料を集めて判決を出してもらわないとわからない」「医事課にはしょっちゅう「こ れこれは医療行為ですか?」という電話がかかってくるが、「それだけを取り出して聞いても判断できない」と答えている」との事でした。

 厚生労働省の公式見解では、「吸引は原則として医療行為」という立場であって、「原則」という言葉をつけてぼかしています。しかし、自治体や一般事業者がこの言葉をそのまま読むと規制したいと考えるのが 普通です。自治体と交渉する際には、「すべての吸引が医療行為とはかぎらない(厚生労働省)」「吸引を行っているからと言って訪問介護事業者指定を取り消 しにするということはない(厚生労働省)」との見解だけを使って交渉を行ってください。

 2003年にむけ、障害者団体が自ら指定事業者になって吸引を行えば、自由に吸引を行えます。逆に社協や民間事業者などが「吸引は医療行為ですからやりません」といわれれば、利用者は対抗することはでき ません。このことからも、全国各地に当事者主体の事業所を作る必要があります。

 厚生労働省は、「今はあいまいなままにするしかないが、ずっと、このような状態がいいとは思っていない。将来は整理していかねばならないと思う」と話し、当事者側からの「吸引や投薬といった、個々の行為 を「医療行為」「医療行為でない」と分類するのではなく、例えば肺炎でICUに入っている障害者の投薬や塗り薬を塗ることは医療行為だが、退院して安定していれば医療行為でない」との話に、「その通りだと思う」との事でした。

 ただし、無原則に開放すると問題を起こす人が出るということで、当事者が自分の責任で介助者個人に対して依頼していること、きちんと病院 などで感染症についての知識の研修を受けていることが必要ではないかなどとの話を意見交換しました。