『自薦登録ヘルパー』と『全身性障害者介護人派遣事業』との違いについて

ガイドブック1で掲載した介護制度の要望書は,
◆登録ヘルパーの要望書ではなく、
◆介護人派遣事業の要望書です。
 間違えないようにお願いします。(資料として添付した静岡の制度も、自選登録ヘルパー方式ではなく、介護人派遣事業の方式です)。
 全身性障害者介護人派遣事業は、全国17カ所で行われている制度です。

 各地の制度名は、各自治体で、以下のように、少しずつ違います。

大阪、兵庫、京都、熊本、などは

全身性障害者介護人派遣事業

東京は

全身性障害者介護人派遣サービス

札幌は

全身性重度障害者介護料助成事業

神奈川は

全身性障害者地域生活支援システム

静岡は

全身性障害者登録ヘルパー派遣事業

 当会では、これらの制度を、まとめて表現するとき、「介護人派遣事業」または、「派遣事業」と呼んでいます。

 全身性障害者の公的な介護制度は、

     ●「介護人派遣事業」のほか、

     ●「自選登録ヘルパー制度」や

     ●「ガイドヘルパー制度」があります。

 この3種類の制度は、『HowTo介護保障』や『ガイドブック1』、この『ガイドブック2』でも、3つの章に分けて、それぞれ解説しました。

ガイドブック1の「派遣事業の要望書セット」では、上記表の静岡の介護人派遣事業の要綱を添付資料として使った関係で、要望書の中で、「全身性障害者登録ヘルパー派遣事業の要望書」と書きました。

 これが、読者(と、この要望書を受けた行政)の混乱の元になったようで、ホームヘルプ制度の中の、「自薦登録ヘルパー方式」と、「介護人派遣事業」の区別がつかなくなってしまったようです。

 実際に、両方の制度がある自治体では、以下のように、一人の全身性障害者が両方の制度を使っています。

実際に両制度が実施されている自治体での運用方法例

@東京、九州の2市で、毎日24時間要介護の一人暮らし障害者の場合

 東京のA市(合計1日24時間)

 

自薦登録ヘルパー12時間

派遣事業8時間

生活保護介護料4時間

 九州のB市(合計1日24時間)

 

自薦登録ヘルパー14時間

派遣事業3時間

ガイド3時間

生活保護介護料4時間

`毎日16時間要介護の一人暮らし障害者の場合(東京)C市

(合計16時間)

自薦登録ヘルパー4時間

派遣事業8時間

生活保護介護料4時間

a16時間要介護の一人暮らし障害者で生活保護を未受給の場合(D市)

(合計16時間)

自薦登録ヘルパー8時間

 派遣事業8時間

 上の表のA市・B市では、「介護人派遣事業」と「自薦登録ヘルパー制度」は、長時間介護の必要な全身性障害者の場合、両方の制度を受けることにより、必要な介護時間を満たすことができます。また、生活保護を受けている障害者の場合、生活保護の他人介護料大臣承認(1日当たり4時間分と考える)を加え、3制度で必要な介護時間を満たします。

 「介護人派遣事業」は、一人暮らしなどの全身性障害者の受けられる制度で、派遣時間が一律(又は2〜3段階)に決められています。障害者の介護ニーズが「介護人派遣事業」の最高派遣時間数(東京なら8時間)を超える場合、市は、「自薦登録ヘルパー制度」で、残りの必要な時間を派遣することにより、介護ニーズを満たします。

(注)上記表の、九州のB市の詳細は、注3を参照。

(注)上記表の、東京のA市の詳細は、注4を参照。

「全身性障害者介護人派遣事業」と「自薦登録ヘルパー方式」の比較表

全身性障害者介護人派遣事業 いわゆる自薦登録ヘルパー方式
いちづけ 市段階ではホームヘルプとは別制度(国段階では同じ) 市の、ホームヘルプ制度の中の一方式
市の要綱は ホームヘルプの要綱とは別に派遣事業の要項や要領を作る これに関しての独自の要綱は作らない
市の予算は ホームヘルプとは別予算で、派遣事業の予算書を作る ホームヘルプの本予算。老人、身障、知的障害、の一括予算
制度を始める時の予算措置 新規事業のため、9月に予算要求、翌年4月から開始(事業開始まで時間がかかる) 新規事業ではない。予算を伴わないため、すぐ開始できる。派遣時間数が増える場合は、補正予算で対応できる
派遣時間 要綱・要領などで派遣時間数を一律又は2〜3段階に規定 通常のホームヘルプ事業と同様に、派遣時間数を個々に決定
補助金 ホームヘルプ事業の国の補助金を利用できる(注2) ホームヘルプ事業の国の補助金を利用できる

@全身性障害者介護人派遣事業とは、

この制度は、各自治体で、ホームヘルプ事業とは、別建ての事業として、予算化され(市の予算書にはホームヘルプとは別の項目で書かれる)、実施されています。要綱も、ホームヘルプの要綱とは別に、派遣事業の要綱を作ったり、要領を作ったりします。(注1)

 新規にこの制度を作るには、新規事業のため、9月の概算要求までに、市の障害福祉課と交渉が終わって、制度を作る合意ができていなくてはなりません。市町村の予算決定の仕組みは、毎年、9月〜11月ごろに、「翌年4月からの1年間の予算」を各課や各部で概算し、財務部に要求し、折衝します。翌年1月に決定し、3月議会で(形だけの)予算可決があり、4月から制度が始まります。

 この制度を多い時間数で始めるには、9月までに、何度も障害福祉課と交渉し、福祉部内の来年度の新規事業の「最重要課題」に上げてもらわねばなりません。そのためには、かなり、課長などに必要性や緊急性を訴え、理解しておいてもらわねばなりません。

今から交渉を行って、平成9年9月までに交渉が終われば、10年4月から制度が実施できるかも知れません。2年度がかりで長期間かかりますので、早め早めにとりかかってください。

この制度の交渉は、要望書セットを見せ、自分たちの生活実態を十分話していくだけでできます。後に紹介する自薦登録ヘルパーの交渉に比べ、簡単に(交渉戦術や制度に関する高度な知識が不要で)交渉できます。

A自薦登録ヘルパー方式とは、

 ホームヘルプ事業では、市や委託先団体(社協など)の、常勤ヘルパー・非常勤ヘルパー・登録ヘルパーが派遣されます。この、登録ヘルパーに、障害者の介護者を登録し、その障害者専用に派遣させる方式が、いわゆる「自薦登録ヘルパー方式」です。

 この方式は、市町村の「従来からのホームヘルプ事業の予算」の中で行う制度で、新規事業ではないので、予算措置はありません。(多くの市は、老人・身障者・障害児・知的障害の一括のヘルパー予算)。

 1年のうち、何月からでも開始できます。ただ、この方式で自薦登録のヘルパーを派遣し、派遣時間数が増える場合には、後でホームヘルプ事業の補正予算を組むことになります。どちらにせよ、新規事業で4月からしか開始できない「派遣事業」に比べ、この方式は今月からでも開始できる方法です。

 派遣事業は要綱を別に作りますが、この自薦登録ヘルパーは、市のホームヘルプ事業の要綱内の制度のため、別に何らかの要綱・要領などを作ることはありません。

(注1)厚生省は都道府県に対し、今後は、静岡や東京(平成9年4月からの新要綱)の様に、自治体の「ホームヘルプ事業の要綱」の下に「全身性障害者介護人派遣事業」の要領(や運用基準)を位置づけるように指導している。(今までに制度化した自治体には、この新しい方針は適用しない)。具体的には、自治体のホームヘルプ要綱に「全身性障害者については上記の派遣方式のほか、別に定める派遣方式を行う」等と書き、「要綱」の下の、「要領」や「運用基準」で、介護人派遣事業を規定するという方式。(今までに制度化された市では、ホームヘルプ事業の要綱と、介護人派遣事業の要綱が並立していた)。なお、厚生省は、今後は東京都の制度がモデルになる、と言っている。

(注2)国の、ホームヘルプ事業の補助金を、「介護人派遣事業」に使っている市がほとんどで、補助金を使っていない市は札幌市・東京のみ。(東京都は、平成9年4月からホームヘルプ事業の補助金を組み入れ、制度名を「全身性障害者介護人派遣制度」に変更する予定)。

(注3)九州のB市は、24時間要介護の単身の全身性障害者については、自選登録ヘルパーを、毎日14時間(上限)まで派遣するという方針。ただ、現在までの実績では、週40時間の派遣まで(ヘルパー登録に3級研修が必要なため、自選の介護者が一人しかいないため)。

(注意:市に直接問い合わせしないようにお願いします。迷惑がかかります。市の制度等、詳しく知りたい方は、必ず、当会0422-51-1565に聞いてください。)

(注4)東京のA市のように、単身の24時間要介護障害者に、自選登録ヘルパーを毎日12時間派遣している市は、都内に12市区ある。障害者の介護ニーズ(要介護時間数)の判定は、障害者の話を元に、家庭訪問した市の職員が障害者と相談して時間数を決める。

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