課長会議資料解説と当日の報告
2009年3月12日に厚生労働省で都道府県・政令都市・中核市の課長などを集めて障害福祉関係主管課長会議が行われました。
注目点を解説します。
ヘルパー時間数は「地域で自立した生活ができる適切な支給量を定める」ことが書かれました。
特に日常生活に支障が生じる恐れがある場合は、非定型で、自立した生活が出来るヘルパー時間を決定するようにとの文書が書かれています。
(課長会議資料16p)
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また、国庫負担基準が上限ではないことも書かれています。
全国の市町村の中には、1人暮らしの24時間の介護の必要な障害者がいても、自立した生活が送れるようなヘルパー時間数を決定しない市町村がまだまだたくさんあります。一方で、毎日24時間の重度訪問介護を決定している市町村も全国の市町村数で1割(人口比で全国の3〜4割)あります。
全国1800市町村のすべてで、障害者が選んだ住まいで自立生活できるようなヘルパー時間数が決定されるようにしなければ、重度の障害者は住みたいところで暮らせず、入所施設に入るしかなく、施設から地域への移行も進みません。
今回の文書を交渉に使って、制度を障害者自身で変えていく交渉を行っていきましょう。交渉方法のアドバイスは制度係フリーダイヤル0037-80-4445へ。
また、上記の文書に続いて、介護保険対象になっても、上限無しで必要なヘルパー時間数を出すように書かれました。
(課長会議資料16p)
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これは、たとえば障害ヘルパー制度で毎日8時間のヘルパーを決定されるべき人が、もし介護保険の対象であっても、介護保険のプランでは最高でも毎日3時間の身体介護しか出ないため、残り5時間のヘルパー制度は障害ヘルパーで決定されるという意味です。
一部の市町村では、介護保険対象者の障害者に対し、介護保険のサービスだけを認め、障害ヘルパーを支給しない悪例が見られます。このような市町村でも交渉して制度を改選していきましょう。
短時間の細切れ介護は重度訪問介護で決定せず身体介護で決定するように書かれました
この部分は当会が要望しました。本来身体介護で決定すべき1回1〜2時間
などのサービスを、単価が安くて済むという理由で、重度訪問介護で決定している悪質な市町村があります。
(課長会議資料17p)
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このため、「事業所が見つからないのでサービスが使えない」「事業所がどこも引き受けてくれず、選択肢がないので、能力のない事業所しか選べない。介護がきちんと出来ない登録ヘルパーが引継ぎもなく派遣されてくる。しかも依頼した一部分だけしかヘルパーが来ない。休まれたら代わりを派遣できないといわれる」など、劣悪なサービスを受けるしかない状況も報告されています。
悪質な市の中には、医師の意見でもあきらかに24時間付きっ切りの重度訪問介護が必要な重度の全身性障害者に対して、「1時間ごとに重度訪問介護を使ったり空白をあけたりの繰り返しで、使いなさい」といい、毎日12時間分しか重度訪問介護を支給決定しない事例もあります。
また、深夜の巡回介護(身体介護30分を使わなければならない)を重度訪問介護で事業所にやらそうとしている悪質な市もありました。
今回の課長会議資料では、30分単位の請求がスタートするので、重度訪問介護を1回30分だけで使えると勘違いしないように説明し、重度訪問介護は長時間滞在型のサービスであると書いてもらいました。
また、重度訪問介護の時間数決定の際、(排泄などのいつあるかわからないがすぐに対処しなければいけない介護のための)「見守り」を計算に入れずに、「実際に身体介護や家事援助をする瞬間の時間を(分単位で)足し算してその合計時間を支給決定する」という誤った運用の市町村があるため、重度訪問介護とは「見守りを含む長時間にわたる支援」であると再度書いてもらいました。
この文章をよく読み、この文章を使って、適正な制度運用がされるように、市町村と交渉をしてください。
重度訪問介護は連続8時間で使わないと、ヘルパーを雇用できる単価設定になっていません。(身体介護の短時間サービス3回分(常勤ヘルパーが1日に稼動する想定回数)にあわせて、重度訪問介護8時間の単価が決められているため、8時間連続の利用でないと、事業所はヘルパーを雇用できません)。
詳しくは以下を参照 http://www.kaigoseido.net/sienho/09/judotannka-kaisei.htm
サービス提供責任者の基準緩和
重度訪問介護は、サービス提供責任者(主任ヘルパー)の基準が緩和されました。これにより、事業所にサービスを依頼したときに、「サービス提供責任者が基準いっぱいで足りない」という理由で断られることが少なくなります。
(課長会議資料16p)
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居宅介護や介護保険ではサービス提供月450時間で1名のサービス提供責任者が必要ですが、重度訪問介護の場合は、月1000時間で1名でよくなります。また、ヘルパー数基準でも、居宅介護や介護保険ではヘルパー10人にサービス提供責任者1名必要ですが、重度訪問介護は20人に1名でよくなりました。
このほか、新しい基準で、利用する障害者5名に対してサービス提供責任者1名でもよくなりました。3種類のどの基準を使ってもよいため、たとえば、24時間365日の最重度の利用者の場合、月744時間の利用になりますので、利用者数5名に1名の基準を適用すれば、事業所はサービス提供責任者の数が少なくてすみます。
現実的にも、最重度の自立支援や介護をしている自立生活センターなどでは、利用者5名でコーディネーター(主任ヘルパー)1名という程度が妥当です。
このほか、居宅介護・重度訪問・行動援護共通で、介護保険の改正に合わせて、非常勤(常勤の半分以上働いている者)のサービス提供責任者が少し加わってもいい改正が行われます。
(課長会議資料15p)
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週40時間勤務の事業所ならば、週20時間勤務の介護福祉士が2名いれば、合計1名分のサービス提供責任者として配置できます。
(2〜5名設置の必要な事業所は1名分(=20時間が2名)が非常勤でOKに、6名以上の場合は全体の3分の1未満が非常勤でOKになります)
4月から、このように基準に余裕が出来るので、3月以前は障害者が申し込んでも利用を断られていたヘルパー事業所にも、再度4月以降のサービスを申し込めば、受けてくれる事業所があるかもしれません。
重度訪問介護の国庫負担基準額が大きくアップ
国庫負担基準が全体的に少しずつ上がりましたが、重度訪問介護は大きく上がり、中でも、区分6が月29万円から月40万円に大きく上がりました。
(課長会議資料35p・118p)
訪問系サービスに係る国庫負担基準 |
区分6の場合、新基準額を1時間単価で割ると1日7時間分となり、多くの市町村で、健常者の家族が複数同居の障害者でも1日7時間は利用が出来るようになる可能性があります。(国庫負担基準を単価で割った時間を支給決定基準にしている市町村が多いため)。4月からの支給決定基準の改正に向けて、交渉を行ってください。地域の障害者が交渉を行わないと、支給決定基準が以前のまま、変わりません。(なお、家族が病気や高齢、全員働いている、1人暮らし、障害が非常に重いなど、支給決定基準では自立した生活が送れない場合は、非定型扱いとして、支給決定基準を超えて上限無しでヘルパー時間を決めてよい制度です。必要性のある人は支給決定基準にかかわらず、市町村と交渉してください。)
重度包括の国庫負担基準も45万500円から80万円に大きく上がっています(ALSの運動団体の成果です)。しかし、重度包括対象者が重度訪問介護などを使う場合は、現在の44万6500円が、4月より58万400円へと中途半端に上がり、重度包括の80万円との差が大きく開きました。国庫負担基準オーバーを気にする市が、障害者本人が望む重度訪問介護ではなく重度包括を支給決定する問題がおきそうです。
重度訪問介護ならば複数の事業所が選べますが、現状で重度包括は事業所が少なく、あっても1箇所しか選べないという実態です。利用者が事業所を自由に選択できなければ、事業所の立場が利用者よりはるかに強くなり問題が起きます。重度訪問介護などを使っても同じ80万円とすべきです。
なお、国庫負担基準は支給決定の目安にされている向きもありますが、あくまで国庫負担金を国から市町村に分配するためのツール(分配計算のための数字)にすぎません。「同じ市内の1年分の全ヘルパー制度利用者の国庫負担基準」を足し、その合計額が「市町村のヘルパー事業費」より大きければ、市町村のヘルパー事業費は全額が国庫負担の対象になるという制度です。(逆に国庫負担基準の合計よりヘルパー事業費が多かった場合は、その差額は国庫負担対象外となり、県の地域生活支援事業や、基金事業で補助されることになります)。
*国庫負担基準の区分間合算と従前額保障(17年度額実績)は、21年度以降も継続すると書かれました(14p)。
当日報告
自薦ヘルパー(パーソナルアシスタンス制度)推進協会本部事務局
本日の会議は、本来ならば12月の社会保障審議会障害者部会の報告や、
先の与党プロジェクトチームの報告を受けて、障害者自立支援法の法律改正について
詳細な資料等が出てくる予定でしたが、現時点で与党との調整が終わっておらずお示しできない、
という説明がありました。
ですので、今回の資料はこれまで出された報酬単価案や国庫負担基準、指定基準案についての
詳細な説明、Q&Aなどが中心でした。
訪問系サービス・重度訪問介護に関わる事項としては、
・サービス提供責任者の要件が緩和(障害福祉課資料p15〜16)
特に重度訪問介護は1000時間につき一人、従業者20人に一人、利用者5人に一人
と大幅な緩和になっています。
・重度訪問介護の支給決定についての留意事項(同p16〜17)
単価の低い重度訪問介護を短時間利用に支給決定できないように
かなり細かい指示が出されています。
・行動援護のサービス提供責任者・ヘルパー資格要件の経過措置延長(同p15)
また質疑応答のなかで明らかになったことですが、
今年度から新規の基金事業として設けられた
国庫負担基準を超過した市町村の財政支援を行う
重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」は
重度訪問介護のみではなく、居宅介護も含め不足分を算定できるようになった
とのことです。
実務的ところでは
・特定事業所加算の都道府県への届け出は、4月から開始の場合
本来は前月の15日(つまり3月15日)までに提出だが、今回は
4月中に届ければ算定が可能。
・4月分の請求業務ついては混乱が予想されることから、
各都道府県・市町村・連合会においては特段の配慮い、
対応可能な範囲で弾力的に請求を受け付ける。
などの文章がでています。