平成17年4月22日

厚生労働大臣

尾辻 秀久 殿                    

                      公明党厚生労働部会   

                         部会長 福島 豊 

 

障害者の自立支援に関する要望

 

障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、これまで身体・知的・精神に分かれていた3障害の福祉サービスを一本化する「障害者自立支援法案」が第162回通常国会に提出された。

同法案は、市町村にサービス供給量の数値目標等を明記した障害福祉計画の策定を義務づけ、市町村を中心とするサービス提供体制を確立することや、これまで遅れをとってきた精神障害者の福祉施策を身体・知的障害者と同等に引き上げるため、障害の種別にかかわらず共通のサービス提供を可能とすることなどが盛り込まれ、障害者の福祉施策全般の向上を図るものとして評価できる。

 一方で、これまでの応能負担から、公平な費用負担と配分の確保を図るため、サービスの利用量に応じた応益負担の導入を盛り込んでおり、障害者福祉サービスを利用する障害者の方々に大きな影響を与えることが懸念される。

 よって、同法案の国会審議にあたり、障害者の置かれている実態やこれまでの施策展開との整合性を図りつつ、下記の事項につき、慎重な検討を行うとともに、必要な予算措置を講ずるよう、強く要望するものである。

 

1.利用者負担の見直しについて

@ 利用者負担の見直しにあたっては、障害者の所得実態を踏まえた十分な配慮を行うこと。また、就労支援策の一層の充実をはじめとした各種の所得保障を確立するための方策を一体的に進めること。

A 低所得者の利用者負担の上限額の設定や減額措置については、世帯単位の収入に基づくものとなっているが、扶養義務の撤廃の趣旨を踏まえ、障害者本人の所得を基本としつつ上限設定・減額措置が図られるよう検討すること。

B 雇用型の就労継続支援事業について、一般企業と同様の雇用関係があること等を踏まえ、事業主の負担による減免措置の導入を検討するなど、障害者の就労促進の観点から十分な配慮を行うこと。

 

2.評価尺度・基準および市町村審査会について

@ 市町村がサービス量等を決定する際の評価尺度・基準については、障害者の多様な特性とニーズを踏まえ、障害者の地域生活を可能とする適正な基準を設定すること。

A 市町村審査会のあり方については、障害種別特性の知識を有し状況を判断できる者を審査会委員に任命するなど、障害者の心身の状態や生活状況が十分反映されるよう配慮すること。

B 最重度障害者については、長時間介護サービスが確保されるような障害程度区分と国庫負担基準とし、必要な支援水準を確保すること。

 

3.精神障害者の社会復帰支援・障害に係る公費負担医療制度について

@ 精神障害者の社会的入院の解消、地域生活の具体化を早急に図るため、必要な法整備および社会資源の整備を行うこと。

A 精神障害者通院医療費公費負担制度の利用者負担については、精神障害者の所得の実態を踏まえ、治療の中断につながらないよう低所得者に十分な配慮を行うとともに、継続的に医療費負担が生じることから利用者負担に上限が設定される「重度かつ継続」に該当する疾病等の範囲についても、実態に応じ弾力的な対応を図ること。

 B 育成医療、更生医療について、医療機関における一時的な高額医療費が発生する場合は、医療保険の高額療養費の現物給付化や利用しやすい貸付制度を設けるなど、利用者の負担軽減のための措置を検討すること。

 

4.移動介護サービスについて

@ 移動介護サービスやコミュニケーション支援については、障害者の地域生活や社会参加を促進するために重要な役割を果たしている実状を踏まえ、サービス水準の後退や市町村格差が拡大することのないよう必要な財政措置を講ずること。

 

5.地域生活の場について

@ 地域生活の場については、ケアホームやグループホームといった障害程度別の区分により住む場所が限定されないよう、当事者の居住の場の選択権を保障し、障害程度に関わらず共に住み続けることができるよう配慮すること。

A グループホームやケアホームについては、それぞれのサービスにふさわしいサービスが確保されるよう、規模、人員配置、報酬等の基準について配慮するとともに、障害者の所得実態や住宅事情を考慮し、居住コストの軽減に資する住宅政策の充実に努めること。

 

6.国庫補助負担金の配分について

国庫補助負担金の配分にあたっては、例えば家族の介護を得られない最重度障害者が在宅で暮らすことができるような基準設定を行うとともに、必要なサービス確保が図られるよう柔軟な運用に配慮すること。