医政発第0717001号
平成15年7月17日
各都道府県知事 殿
厚生労働省医政局長
ALS(筋萎縮性側捜索硬化症)患者の在宅療養の支援について
 ALS患者の在宅療養については、家族が24時間体制で介護を行っているなど、患者・家族の負担が大きくなっており、その負担の軽減を図ることが求められている。このため、在宅ALS患者の療養生活の質の向上を図るための方策や、ALS患者に対するたんの吸引の医学的・法律的整理について、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」において検討されてきたところであるが、今般、報告書が別添1のとおり取りまとめられたところである。
 同報告書においては、在宅ALS患者が家族の介護のみに依存しなくても、円滑な在宅療養生活を送ることができるよう、@訪問看護サービスの充実と質の向上、A医療サービスと福祉サービスの適切な連携確保、B在宅療養を支援する機器の開発・普及の促進及びC家族の休息(レスバイト)の確保のための施策を総合的に推進するなど、在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置を講ずることが求められ、その上で、在宅ALS患者に対する家族以外の者(医師及び看護職員を除く。以下同じ。)によるたんの吸引の実施について、一定の条件の下では、当面の措置として行うこともやむを得ないものと考えられると整理されている。
 在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置を講じていくことは重要であり、また、たんの吸引については、その危険性を考慮すれば、医師または看護職員が行うことが原則であるが、ALS患者の在宅療養の現状にかんがみれば、在宅ALS患者に対する家族以外の者によるたんの吸引の実施について、下記の条件の下では、当面のやむを得ない措置として許容されるものと考える。
 貴職におかれては、同報告書の趣旨を後了知の上、関係部局間の連携を密にし、管内の市町村(特別区含む。)、関係機関、関係団体等に周知するることともに、ALS患者の在宅療養の支援について適切に対処するようお願いいたしたい。
 また、同報告書3.の(2)のC)の患者の同意に係る同意書の例(別添2)を併せて送付するので参考にされたい。
 なお、今回の措置の取扱いについては、3年後にその実施状況や在宅ALS患者を取り巻く療養環境の整備状況等について把握した上で確認することを申し添える。
 おって、当省関係部局からもALS患者の在宅療養の支援に関する通知を発出することとしているので、御留意願いたい。
療養環境の管理
  (1) 入院先の医師は、患者の病状等を把握し、退院が可能かどうかについて総合的に判断を行う。
  (2) 入院先の医師及び看護職員は、患者が入院から在宅に移行する前に、当該患者について、家族や在宅患者のかかりつけ医、看護職員、保健所の保健師等、家族以外の者等患者の在宅療養に関わる者の役割や連携体制などの状況を把握・確認する。
  (3) 入院先の医師は、患者や家族に対して、在宅に移行することについて、事前に説明を適切に行い、患者の理解を得る。
  (4) 入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び看護職員は、患者の在宅への移行に備え、医療機器・衛生材料等必要な準備を関係者の連携の下に行う。医療機器・衛生材料等については、患者の状態に合わせ、必要かつ十分に患者に提供されることが必要である。
  (5) 家族、入院先の医師、在宅患者のかかりつけ医、看護職員、保健所の保健師等、家族以外の者等患者の在宅療養に関わる者は、患者が在宅に移行した後も、相互に密接な連携を確保する。
在宅患者の適切な医学的管理
 入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び訪問看護職員は、当該患者について、定期的な診療や訪問看護を行い、適切な医学的管理を行う。
家族以外の者に対する教育
 入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び訪問看護職員は、家族以外の者に対して、ALSやたんの吸引に関する必要な知識を習得させるとともに、当該患者についてのたんの吸引方法についての指導を行う。
患者との関係
 患者は、必要な知識及びたんの吸引の方法を習得した家族以外の者に対してたんの吸引について依頼するとともに、当該家族以外の者が自己のたんの吸引を実施することについて、文書により同意する。なお、この際、患者の自由意志に基づいて同意がなされるよう配慮が必要である。
医師及び看護職員との連携による適切なたんの吸引の実施(注:別添1の別紙参照)
  (1) 適切な医学的管理の下で、当該患者に対して適切な診療や訪問看護体制がとられていることを原則とし、当該家族以外の者は、入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び訪問看護職員の指導の下で、家族、入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び訪問看護職員との間において、同行訪問や連絡・相談・報告などを通じて連携を密にして、適正なたんの吸引を実施する。
  (2) この場合において、気管カニューレ下端より肺側の気管内吸引については、迷走神経そうを刺激することにより、呼吸停止や心停止を引き起こす可能性があるなど、危険性が高いことから、家族以外の者が行うたんの吸引の範囲は、口鼻腔内吸引及び気管カニューレ内部までの気管内吸引を限度とする。特に、人工呼吸器を装着している場合には、気管カニューレ内部までの気管内吸引を行う間、人工呼吸器を外す必要があるため、安全かつ適切な取扱いが必要である。
  (3) 入院先の医師や在宅患者のかかりつけ医及び訪問看護職員は、定期的に、当該家族以外の者がたんの吸引を適切に行うことができていることを確認する。
緊急時の連絡・支援体制の確保
 家族、入院先の医師、在宅患者のかかりつけ医、訪問看護職員、保健所の保健師等及び家族以外の者等の間で、緊急時の連絡・支援体制の確保する。
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健総発0717001号
健疾発0717001号
平成15年7月17日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿
厚生労働省保健局総務課長
疾病対策課長

ALS(筋萎縮性側捜索硬化症)患者の在宅療養の支援について

 ALS患者の在宅療養については、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」において検討されてきたところであるが、今般、報告書が別添のとおり取りまとめられたので、同報告書の趣旨を後了知の上、管内の市町村(特別区含む。)、関係機関、関係団体等に周知いただくとともに、下記の取り組みを推進し、引き続きALS患者等の難病患者の在宅療養の支援等に努められるようお願いいたしたい。

ALS等の疾患により人工呼吸器を使用しながら在宅で療養している患者のうち、医師が訪問看護を必要と認める者に対しては、必要なときに適切な訪問看護サービスを受けることができるようにするため、診療報酬で定められた回数を超える訪問看護の費用を補助している「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」の有効な活用に取り組んでいくこと。
医療や福祉の関係者に対する「難病患者等ホームヘルパー養成研修事業」を引き続き適切に実施していくこと。
平成15年度から開始されるALS患者等の難病患者及びその家族に対するきめ細やかな支援を行う難病相談・支援センター事業については、その趣旨を十分御理解のうえ、関係方面の協力を得ながら、積極的に取り組んでいくなど、ALS患者等の難病患者及びその家族に対する相談・支援などをさらに充実させること。
介護保険法、老人福祉法、身体障害者福祉法等の施策の対象となっていないALS患者等の難病患者の在宅療養を一層推進し、もって福祉の増進を図ることを目的として、難病患者等居宅支援事業における難病患者等ホームヘルプサービス事業、難病患者等短期入所事業、難病患者等日常生活用具給付事業の実施について、貴管下市町村(特別区を含む。)等に再度周知徹底を図ること。
ALS患者等の難病患者の病態急変などに対応するため、重症難病患者入院施設確保事業を増進することにより、適時に適切な入院施設の確保等が行えるよう、地域の医療機関の連携による難病医療体制の整備を図ること。
ALS患者等の難病患者が在宅において療養生活が維持できるよう最適なサービスが提供されることが必要であることから、保健所における難病患者に対する保健、医療、福祉等の種々のサービスの総合調整機能を充実強化すること。なお、難病患者が介護保険の対象者となった場合においても保健所における同様の対応が重要であること。
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老振発第0717001号
平成15年7月17日
各都道府県介護保険主管部(局)長 殿
厚生労働省老健局振興課長
疾病対策課長

ALS(筋萎縮性側捜索硬化症)患者の在宅療養の支援について

 ALS患者の在宅療養については、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」において検討されてきたところであるが、今般、報告書が別添のとおり取りまとめられたので、同報告書の趣旨を後了知の上、管内の市町村(特別区含む。)、関係機関、関係団体等に周知願いたい。

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(別添2)

同意書(例)

平成   年  月  日
氏名(家族以外の者の氏名) 様
住所(家族以外の者の住所)


患者氏名(署名又は記名押印)

私は、あなたがたんの吸引を行うことに同意いたします。


代理人・代筆者氏名          
(署名又は記名押印)
同席者氏名               
(署名又は記名押印)
*患者が未成年である場合又は患者が署名若しくは記名押印を行うことが困難な場合には、家族等の代理人・代筆者が記入し、当該代理人・代筆者も署名又は記名押印を行ってください。この場合、第3者が同席し、当該同席者も署名又は記名押印を
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